ルネジョリー訪問記

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パリ東駅から約1時間半のトロワ駅から更に車で約1時間走ったところにルネジョリーのメゾンはあります。 
約束の時間の電車に乗りいざパリを出発、トロワ駅へ 。
ルネ・ジョリーの当主ピエールエリック・ジョリーさんが迎えに来てくれている約束なんですが、まだ来ていない・・・。 
「ごめんね?、今トラック乗ってて少し遅れそう」 とのこと。しょうがないのでトロワの駅前を少し散策してみました。 ちょうど市場が立っていました。
やっぱりフランスの市場やスーパーの食べ物売り場は見ていて 飽きることがありません。アーティチョークに根セロリ、ビーツ、生ハム、鴨に羊。 
ちょっとかわいそうですが、元気な鶏やうさぎも見つけました。 今夜の晩御飯になるんでしょうか・・・? 

そうこうしているうちにピエールエリックさん登場。 
車で飛ばして小1時間でまずは彼の畑に到着しました。 

一目見て素晴らしい畑とわかる、一杯に日差しを浴びた一面のブドウ畑。
本当にはるばる訪問した甲斐があったと感動する瞬間です!
ちょうど訪問した時期は剪定で枝を落とす時期でした。


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「全部の畑を手作業で5人でやってしまうんです。」
 「えっ、この畑全部?」
「もちろん」
「他にも畑が3つあるんですよね?」
「もちろん」全て手作業と説明は以前より受けていましたが、やっぱりいざ目にすると驚きを隠せません。
いろいろ話を伺っていると作業中のおじさん発見。
ちょうど剪定作業中だったので見せてもらいました。
握手すると、しわしわのごつい手。その手の感触から大変な作業をされていることを感じます。こういうおじさんと会うといつも感じます。やっぱりワインは農産物です。
このような農村の人の毎日の作業の積み重ねによって得られるもの。
どんなワインでもそのグラスの向こうには作り手さんの努力があります。
この握手の感触を忘れずに、ワインを飲むときは必ず感謝して楽しもうと思います。

少し横道にそれましたが、作業の説明に戻ります。

切り落とした大きい枝はその場でゴンドラに乗せて燃やしてしまいます。小さな枝は地面にそのまま落とします。これは土壌の温度管理の為でもあるそうです。

土壌は白亜質で地面の石を見ながら歩いていると貝の化石などがちらほらと見受けられます。シャンパーニュのカーヴはこの白亜質の土壌を掘り下げて作るため、適度の湿度と温度が保たれ保管に最適な環境が得られるのだそうです。
ちなみにシャンパーニュ地方では石造りの家が有名ですが、実はあれはお金持ちの人ができることでトロワの街近辺には木組みの家が多く見られます。

こうして畑を見て回った後は、いよいよワイナリーへ!
車で少し走ると立派な門が登場。4匹の黒犬が迎えてくれます。
名前を聞くと「ナラ」と「サミ」と「ビッキー」それから・・・
なにやらもったいぶるピエールエリック
「バンザ?イ」
え?っ。そんな名前付けられちゃったのか。黒犬くん。
なんでも日本にワインを輸出した記念に名づけられたそう。めでたい名前ですがまっすぐ育ってほしいものです。

話を本題に戻し、彼のメゾンの有る地域Landrevilleで栽培されている葡萄品種の80%以上はピノノワール。
しかし、ルネジョリーの特徴はシャルドネの栽培比率の多さにもあります。
約67%ピノノワール、約33%シャルドネ、ピノムニエ1本!?
実はメゾンの前にピノムニエが1本だけ植えられています。本当にお茶目なことをしてくれます。
ちなみに、このピノムニエはシャンパーニュには使われていないそうです。

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ワイナリーに入るとなにやら講義をしたあとが・・・。
ちょうど訪問した前日に学生さんにワイン作りについて講習していたそうです。
「ワイン作りもしながら大変じゃないですか?」と聞くと、「教えるのは好きだから苦にならない」とのこと。
それは良かった!では私にもとお願いすると、図つきで説明してくれました。
4000Kgの葡萄から2550ℓの果汁が取れます。最初の200ℓは細かなごみなども入るので使いません!
最後に強く絞った果汁300ℓも良質ではないので使いません!真ん中の2050ℓのみをシャンパーニュにします!
つまり収穫した葡萄の果汁の80%しかシャンパーニュになれないということ。
これもシャンパーニュの品質にこだわるからこその製法です。

さて、ここでシャンパーニュになる前のワインをテースティングさせてくれることになりました。
これこそ、ワイナリーを訪れないと出来ない楽しみのひとつです。
2006年のピノノワール、2004年のピノノワール、2005年・2006年のシャルドネ・・・
テースティングの感想は、お世辞抜きに素晴らしいの一言です。
特に彼が「これまでのメゾン最高の出来」という2005年・2006年のシャルドネの樽熟には度肝を抜かれました。
ブルゴーニュのグランクリュでもなかなかこれだけの味わいと香りのふくらみを持ったワインはないんじゃないかと思うほど。
感激にひたりながら、彼にその感想を伝えると、自分のこだわりについて話してくれました。

「実はシャンパーニュの生産者は泡を作らなければという思いにとらわれていることが多い。確かにそれなりのワインを作り、ちゃんとした製法でつくればそれなりのシャンパーニュは出来るかもしれない。
しかし、最高のシャンパーニュは最高の白ワインから生まれるもの。だからこそ白ワインとしての品質にもこだわるし、こうしてテースティングもしてもらっているんだ」

なるほど!きっとこのワインが瓶詰めされシャンパーニュになったものを飲めば、彼の言葉の重みがさらに強く感じ
られることでしょう。今から出来上がりが楽しみでなりません。
このワインは「キュベプレステージRJ」に使用されるとのこと。期待してお待ち下さい。


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次は地下のカーヴへ、ひんやりとした空気が頬に触れます。
かなり歴史を感じるカーヴなので、「いつつくられたものですか?」と聞いてみると、またまた驚きの答えが返ってきました。
「1737年、270年前です」
「それって歴史的建造物じゃないの?」っていうくらいのことを普通に言うから本当にびっくりします。

そして、次にまたまた嬉しい驚きの一言が、
「今日は、日本からはるばる来てくれたお礼に特別なシャンパーニュをご馳走しましょう。」
そう言って出してきてくれたのはまだ澱抜きしていない13年熟成のシャンパーニュ!
「せっかくだから、デゴルジュマン(澱抜き)の作業も実演しますね。」
なんてサーヴィス精神旺盛なんでしょう。喜んで見物させていただきます。
冷却水を使用した機械で凍らせて澱抜きする生産者が多い中、彼はそのまま冷却水も使用せずまさに職人芸で澱抜き作業を行います。
なんと彼は出荷する全てのボトルのデゴルジュマン(澱抜き)を自身でやっているとのこと。
皆さんが日本で口にするルネジョリーのシャンパーニュもすべて彼の手でデゴルジュマンされたものということになります。
このデゴルジュマン→打栓→ラベル貼りの作業を3人で頑張れば1日1700本できるとのこと。
まさに職人集団です。

感心してるとまた彼のこだわりが・・・
「冷却の澱抜き機にしたらどう?とか言われることも多いが、ここが職人としてのプライド。キッシュも冷凍をレンジでチン
では美味しくない。ワインも同じこと。温度変化でダメージを与えてはいけない。他より手間がかかっても品質の良いものを自分の納得するものをつくりたい。そして、それを認めてくれる人、その価値を伝えることの出来る人に扱って欲しい。だから、今回のようにほとんど外国人が訪れないようなこの町に、日本の大阪から井上さんのような人がメゾンに来てくれる。そして、ルネジョリーのシャンパーニュをもっと知ってくれることにとても感謝しています。」
と話してくれました。

その後、そのデゴルジュマンしたての13年熟成のVotre Sante!(乾杯)
この上なく美味しかったのは言うまでもありません。